学科長挨拶

学科長 周佐 喜和

皆さんは、「リスク」と聞くと何を連想しますか。洪水や地震などの自然災害、温暖化ガス排出量増加による地球温暖化(最近は地球沸騰化と言うそうです)の進行、将来の人口減少と高齢化の進展による経済事情の悪化など、嫌なこと、起きてほしくないことを連想される方が大半だと思います。しかし、リスクは嫌だからゼロになるのが一番良いのでしょうか。考えてみると、そうではないことが分かります。たとえば、雨量が多すぎると洪水などの自然災害を引き起こしますが、雨がまったく降らなかったら農作物が育たず、私たちは生存できなくなります。このように考えると、私たちはゼロリスクを追求するよりも、リスクと「うまく付き合う」ことを考えた方が有意義だと言えるでしょう。

環境リスク共生学科では、大きく分けて都市で生活する私たちが接する自然環境と社会環境に関わる諸問題やリスクについて、教育研究を行います。それぞれの分野で問題となるリスクについて、評価や予測技術について学ぶとともに、私たちが安心・安全に生活できる世界を構築するために必要な対処法について学んでいきます。

今日は、多様なリスクが相互に関連し合っていている状況になっています。地球温暖化の問題は、自然災害の増加を引き起こすだけでなく、温暖化ガスを排出しない新エネルギー産業の創出と発展に成功しないと経済力の低下を招くというリスクとも結び付いています。こうした事情を理解し、多様なリスクとどのように付き合っていくかというマネジメント思考を身に着けるために、理系・文系の枠を超えて分野横断的な視点を持てるようなカリキュラムを用意しています。

人類はこれまで大きな自然災害や社会課題が現実に起きるたびに、英知を集めて解決方法を考える中で発展を遂げてきました。しかし、これからは、現実に被害が発生する前に対応を考えることも必要になってくるでしょう。そうした状況の中で、問題解決を筋道立てて考えられる「展開力」を身に着けたいと思う人を求めます。

本学科の特色

環境リスク共生学科-大都市・横浜を拠点として自然と社会の関係を学びリスクと共生する未来を切り拓く- 自然環境および社会環境のリスクに関わる基本原理を理解し、文理融合の総合的な知識により、豊かさと表裏一体で生じる多様なリスクのバランスをマネジメントするリスク共生社会実現の知を育みます。異分野との横断的な連携、社会と対話できる素養を持ちながら、自然環境、社会環境を対象にリスクとの共生を実践し、都市の持続的発展に貢献できる実践力を有する人材を育成します。

本学科が求める学生像(アドミッション・ポリシー)

  • 適切に環境を利用、保護することで新しい利用価値を見出せる“創造力”を身につけたい
  • ヒトから都市、自然生態系、地球までの環境システム全体を見通す“俯瞰力”を身につけたい
  • リスク共生社会を実現していくための政策や管理手法を立案できる“展開力”を身につけたい

このような学生を育てます(ディプロマ・ポリシー)

環境リスク共生学科では以下の4つの能力を兼ね備えた学生を育てます。
1) 地球・生態系および都市環境のリスクに関わる基本原理を理解する能力がある。
2) 文理融合の総合的な知識により,豊かさと表裏一体で生じるリスクとのバランスをマネジメントする「リスク共生」社会実現の知を育む能力がある。
3) 異分野との横断的な連携,社会と対話ができる素養を持ちながら,都市域での環境リスクや災害リスクについて理解する能力を身につけ,それらに適切に対処できる実践力がある。
4) 都市に恵みや災いをもたらす自然のシステムを理解し探求し,都市の持続的発展に貢献できる実践力がある。

沿革

環境リスク共生学科は2017年4月に都市科学部の開設とともにスタートしました。この都市科学部は横浜国立大学にとって50年ぶりとなる新学部です。
環境リスク共生学科の前身は2011年4月に開設された理工学部地球生態学教育プログラム(地球生態EP)です。地球生態EPでは主に「人間を含む生態系とそれを取り巻く地球の環境」を対象としていましたが、これに都市工学や社会科学、リスク共生学の専門家が加わることで、「ヒトから都市、自然生態系、地球までの環境システム全体」を研究・教育対象として拡張することになりました。
地球生態EPの起源(一部)は1973年に本学に設立された「環境科学研究センター」です。このセンターは国立大学ではじめて環境問題の解決を目的とした研究組織であり(その後2001年に大学院環境情報学府へ改組)、著名な生態学者である宮脇昭名誉教授や、環境リスク学の先駆者である中西準子名誉教授をはじめとして数々の著名な研究者が第一線で活躍してきました。
環境リスク共生学科は「豊かさと表裏一体で生じる多様なリスクのバランスをマネジメントするリスク共生社会」の実現に向け、本学の強みである「環境リスク学」に関する研究・教育を引き続き推進していきます。

 

本学科のパンフレットは以下からご覧いただけます。
環境リスク共生学科パンフレット2024
※このパンフレットは2024年時点の情報です。担当教員に一部変更があります。最新情報は都市科学部WEBサイトをご確認下さい。