【プレスリリース】混交海岸林はクロマツ単植林よりも津波への脆弱性が低い

プレスリリース

横浜国立大学大学院環境情報研究院の岩知道優樹非常勤教員(助教)、同大学都市科学部卒業生の金子美乃里、同大学院の佐々木雄大教授は、衛星・航空写真を用いた海岸林の広域評価により、広葉樹とクロマツの混交海岸林はクロマツ単植海岸林よりも津波による被度減少割合が小さく、津波への脆弱性が低い可能性を示しました。
海岸林は、防風や防砂の機能だけでなく、津波エネルギーの減衰や漂流物の捕捉といった、津波被害を軽減させる機能が東日本大震災を契機に注目されています。多くの海岸林は、クロマツ単植林であるため、クロマツ林の密度や樹木の配置を工夫することで、津波被害を最小限に抑える方法に焦点が当てられてきました。本研究では、樹種の多様性に着目し、津波イベント前後の衛星・航空写真を用いて、東日本大震災における津波による海岸林の減少割合を基に被害状況を評価しました。その結果、広葉樹とクロマツの混交林がクロマツ単植林よりも津波に対する脆弱性が低いことが明らかになりました。さらに、混交林において、広葉樹種とクロマツの空間分布がより複雑な海岸林の方が単純な海岸林よりも、津波に対する脆弱性が低い可能性が示唆されました。以上の知見は、海岸林を混交林に移行することにより、津波による海岸林への被害が軽減される可能性を示唆しています。

Natural Hazards 掲載記事

詳しくは、詳細資料をご覧ください。

詳細資料

2023年10月30日 | カテゴリー : お知らせ | 投稿者 : サイト管理者

【プレスリリース】都市街路空間における見過ごされてきた植物の多様性

プレスリリース

横浜国立大学大学院環境情報学府の卒業生のMirka Heikkinen(2022年度博士課程前期修了)、同大学院の佐々木雄大教授は、都市街路空間において見過ごされてきた自発植生(人によって植えられた植物ではなく、自発的に生育する植物)の多様性を評価した論文を発表しました。
 都市街路空間は概して、舗装された路面が目立つため、街路の植え込みや街路樹の基部などの一部を除き、自発植生はあまり存在しないと認識されがちです。自発植生が仮に存在したとしても、人や車の移動に伴う種子散布や定着環境など、人為影響の受けやすさから、そのほとんどが外来植物である可能性が予想されます。この研究では、一見忘れられがちな都市の街路空間において、街路の植え込みや街路樹基部のような土壌に覆われた基質表面だけでなく、アスファルトの割れ目、舗装された歩道、街路と建造物敷地を隔てる壁面など人工的な基質表面にも着目し、自発植生の多様性がどのように分布するのかを調査しました。結果、街路空間のさまざまな生息環境を通して、外来種は必ずしも優占しないこと、生息環境に特有に分布する自発的な植物種が数多く存在することが明らかとなりました。以上の知見は、都市の街路空間もさまざまな自発植生を支えうること、街路空間において多様な生息環境を創成することによって、街路を行き交う人間の目に触れる自発植生の多様性を担保できる可能性を示唆しています。
本研究成果は、国際科学雑誌「Global Ecology and Conservation」に掲載されました(2023年9月5日付)。

Global Ecology and Conservation 掲載記事

詳しくは、詳細資料をご覧ください。

詳細資料

2023年9月14日 | カテゴリー : お知らせ | 投稿者 : サイト管理者

【プレスリリース】気候変動に対する乾燥地の知られざる感受性を解明

プレスリリース

横浜国立大学の佐々木雄大教授は、鳥取大学の衣笠利彦准教授、モンゴル気象水文環境研究所のGantsetseg Batdelger博士、米国ニューメキシコ大学のScott Collins教授らとの国際共同研究で、気候変動に対する乾燥地の知られざる感受性の可視化に成功しました。モンゴル国全土に広く分布する48の草原サイトにおける40年間の植物生産量および気候データを解析した結果です。陸域において、広域的かつ長期的に野外で観測された時系列データは世界的に少なく、さらにそのような時系列データの複雑性ゆえに、気候変動に対する乾燥地の応答の理解には限界がありました。今回は、長期時系列データと非線形時系列解析手法を組み合わせることで、乾燥度の高いモンゴル南部地域では年間の降水量が増加しても生産量は必ずしも増加せず、またモンゴル全域を通して年間の乾燥度が改善されても生産量は必ずしも増加しない、といった感受性を発見しました。生産量は、降水量や乾燥度の変動性の増加に対して、より湿潤な北部地域で負に、より乾燥した地域で正に反応することもわかりました。成果は、気候変動に対する乾燥地の応答の正確な予測に貢献するとともに、乾燥地の牧畜業や農業を気候変動下でいかに持続的に行っていくかを検討する上で重要な科学的根拠となります。
本研究成果は、国際科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」に掲載されました(2023年8月21日米国東部時間午後3時付)。

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS) 掲載記事

詳しくは、詳細資料をご覧ください。

詳細資料

2023年8月21日 | カテゴリー : お知らせ | 投稿者 : サイト管理者

環境情報研究院鏡味教授が、日本生態学会から生態学琵琶湖賞を受賞

受賞情報

生態学琵琶湖賞は、水環境に関連する生態学およびその周辺分野における50歳未満の優れた研究者に贈られる賞です。滋賀県によって1991年に創設され、第15回より日本生態学会が実施主体となり、このたび鏡味麻衣子教授が第22回受賞者になり、滋賀県庁にて、滋賀県の三日月知事より賞が授与され、受賞講演が行われました。 
 鏡味教授は、ツボカビという植物プランクトンに寄生菌類の重要性を琵琶湖の研究をきっかけに見出しました。ツボカビは、大量発生する植物プランクトンに寄生することで、物質の流れを変える役割を果たします。また、ツボカビはミジンコの餌となり、食物網を支えます。本講演では、ツボカビを介した物質の流れ「マイコループ(Mycoloop)」の命名経緯や琵琶湖での最新研究、海洋や雪氷圏、都市での研究展望について紹介しました。三日月知事との質疑応答があるなど、琵琶湖の研究成果への関心の高さが伺える会となりました。

詳細はこちら
掲載記事


賞状と景品

2023年8月7日 | カテゴリー : お知らせ | 投稿者 : サイト管理者

【プレスリリース】発光トビムシの正体を解明!土に潜む、緑色に光る陸上最小の発光節足動物

プレスリリース

大平敦子博士(多摩六都科学館学芸員;当時横浜国立大学社会人大学院生)を中心とする横浜国立大学・多摩六都科学館・名古屋大学・中部大学の研究チームは300年以上謎だった発光トビムシの正体を世界で初めて突き止めました。また、トビムシの発光能を試験する方法を考案し、既知種の中から新たに3種が光ることを発見するという快挙を成し遂げました。加えて、トビムシが発光する様子の動画撮影に世界で初めて成功し、緑色に光るということを科学的に確かめました。これらの成果はニュージーランドの科学雑誌「ズータクサ」に8月7日に公開されました。

Zootaxa (ズータクサ) 掲載記事

詳しくは、詳細資料をご覧ください。

詳細資料

2023年8月7日 | カテゴリー : お知らせ | 投稿者 : サイト管理者

【プレスリリース】氷河・積雪の融解を抑制!?雪氷藻類に寄生するツボカビの実態を解明

プレスリリース

「高山や氷河に出現するツボカビは雪氷藻類に寄生するツボカビである」ということを横浜国立大学大学院環境情報研究院の鏡味麻衣子教授ら及び千葉大学大学院理学研究院の竹内望教授の研究チームが明らかにしました。ツボカビは、カエルやプランクトンなど様々な生物に寄生する菌類として知られています。氷河や高山積雪のような寒冷環境では、その存在は確認されていましたが、何をしているのか明らかになっていませんでした。
本研究では、ツボカビが雪氷藻類に寄生している様子を捉え、その1胞子からDNAを抽出することに世界で初めて成功し、系統関係を明らかにすることができました。さらに、これらツボカビは、世界中の高山に存在しうること、雪氷藻類に寄生することに特化したグループである可能性を示唆しました。
近年、氷河や高山では、雪氷性の藻類の繁殖によって表面が色づき、融解が加速している事実が明らかになっています。その藻類にツボカビが寄生していることは、これらの藻類とツボカビの宿主―寄生者関係によって氷河や積雪の融解が抑制される可能性を示しています。
本研究成果は、2023年6月20日(ロンドン時間)に、Frontiers in Microbiologyよりオンライン公開されました。

Frontiers in Microbiology 掲載記事

詳しくは、詳細資料をご覧ください。

詳細資料

2023年7月5日 | カテゴリー : お知らせ | 投稿者 : サイト管理者