教授 鏡味麻衣子

1.先生はどのような研究をしていますか?

私の専門は水域生態学で、湖や川、海に生息する生き物の生態と機能について研究しています。水域生態系は人為的な影響や環境変動の影響を受けやすく、富栄養化や温暖化、感染症の拡大など解決すべき問題は山ほどあります。基礎研究をベースとしつつ、環境問題の解決につながるような研究を展開して行きたいと思っています。私の研究成果の1つに、ツボカビ という泳ぐカビの研究があります。ツボカビ は植物プランクトンやカエルに寄生しますが、そのツボカビがミジンコの美味しい餌であることを発見し、私の名前(麻衣子)とかけてMycoloopと命名しました。目に見えない水の中で、小さな生物同士が関係を持つことが、大きな物質循環に影響してくるのです。その発見には、 DNA解析など最新の方法に加え、野外調査や工夫を凝らした実験といった古典的手法が活きています。

2.先生が研究を始めたきっかけや理由を教えてください。

安全で美味しい飲み水を失いたくない、という気持ちと、目には見えない微生物(特にバクテリア)の不思議な力に興味を持っており、湖の微生物の研究をしたいと思いました。プランクトンの写真集を卒研の指導教員に渡され、その美しさに魅了されて、プランクトンの研究を始めました。
思い返すと、小学生の頃に見た「風の谷のナウシカ」に強い影響を受けていたのかもしれません。

3.先生の担当している授業をひとつ紹介してください。

「生態系と物質循環I・II」:多様な生物が、陸上生態系や水域生態系においてどのように暮らし、そのことが物質循環にどう影響しているのかをお話しします。温暖化が起こるとミジンコはなぜ成長が落ちるのか、富栄養化で起きるアオコ現象は何が悪いのか、目に見えない菌類や細菌類はどんな暮らし方をしているのか、素朴な疑問に科学的な回答を与えられるよう、共に考えます。

4.どのような学生に履修を薦めたいですか?

中学や高校で「生物」が面白くないなぁと感じた学生さんにはぜひ履修してもらいたいです。受験勉強では生物は記憶する学問だと誤解されがちです。しかし、生物学はまだまだ未知なことが多く、その未知な領域に挑戦するのは謎解きにも似ています。生物学の中でも生態学は、高校で生物を学んでいなくても、ついて行くことができます。生態学的思考力は世の中を渡る上でも重要な力で、身につけておくと損はないです。

5.受験生のみなさんへメッセージをお願いします!

横浜国立大学は「生物学科」のように明確に生物を扱える学部や学科がありません。受験生の皆さんにはわかりにくいかもしれません。しかし、都市科学部環境リスク共生学科には生態学を専門とする教員がたくさんいます。横浜国立大学の一つの特徴だと思います。都市の問題や、地球規模での環境問題に取り組む上で生態学的な思考能力はとても重要です。ぜひ生態学的思考の訓練を一緒にしませんか?

6.研究・教育において、大切にしていることを教えてください!

研究では、なるべく人がやらないこと(やりたがらないこと)に取り組むようにしています。ネットワーク力も大切で、自分の研究を面白がってもらうためにも色々な人との繋がりを大切にしています。オランダでのポスドク滞在経験を生かし、ドイツやスウェーデン、フランスなどヨーロッパを中心とした国際ネットワークも構築しています。学生の時から国際共同研究に加われるチャンスもあります。学生から教わることも多いです。教育では学生の個性を尊重し、学生の希望や素質にあったテーマで研究できるよう心がけています。学生と一緒にやった研究が論文になると、とても嬉しくなります。

7.その他、先生から伝えたいことはありますか?

出会いを大切に、生涯の友や師に出会える大学生活にしてください。また英語力は今後の人生を豊かにしてくれます。幸い、横浜国大には留学生も多く、英語に触れ合う機会も多いです。大学自体が英語力アップのサポートもしており、留学も可能です。積極的に機会を見つけると良いと思います。もし英語が苦手な人は洋画を英語字幕でみる、字幕なしでみる、洋楽を聴いて歌詞を聞き取る、などから始めると良いかもしれません。